2022.02.17 Thu.

【東大クイズ王・伊沢が語る】QuizKnockに学ぶ顧客分析の意義とは?後編

2022.02.17 Thu.

【東大クイズ王・伊沢が語る】QuizKnockに学ぶ顧客分析の意義とは?後編
「どうしたらもっと当社のファンになってくれるのか」と悩みを抱えている企業は多いのではないでしょうか。特に、UX改善によってお客様のサービス利用を定着させ、データに基づいて継続的にビジネス成果を向上させる「UXグロース業務」に取り組む企業にとっては必ずと言っていいほど向き合う悩みです。
そこでビービットは、2021年12月に「QuizKnockに学ぶ、データ活用とファンづくり」と題したウェビナーを開催しました。後編の当記事では、前編に引き続き「データ活用とファンづくり」をテーマに、株式会社baton マーケティング部部長 前田徹哉氏によるオウンドメディアを活用したファン理解に関するセミナーと、3人の登壇者と当社ビービット執行役員CCO兼東アジア営業責任者 藤井保文とのディスカッションの模様をお届けします。
東大クイズ王・伊沢拓司氏が中心となって運営する、エンタメと知を融合させたメディア「QuizKnock(クイズノック)」は、YouTubeやWebメディア上での躍進のみならず、リアルイベントも大人気で、ファンと高い吸着性を持ちながら、ファンに良い体験や驚き、喜びを届けています。その成功の背景には、チーム一丸となった地道な仮説と検証のサイクルがありました。

登壇者紹介

株式会社QuizKnock CEO 伊沢拓司

2016年にWEBメディア「QuizKnock」を立ち上げ、2017年から同名のYouTubeチャンネルにて活動。現在運営している4つのチャンネルは総登録者数250万人を超える。『東大王』『アイ・アム冒険少年』『林修の今でしょ!講座』等のテレビ番組にもレギュラー出演し、幅広い世代に「楽しいから始まる学び」を届けている。

株式会社baton 代表 衣川洋佑

ERPベンチャーでの製品開発・新規事業開発を経験後、2013年10月株式会社batonを創業。対戦型問題集(アプリ)や自動車学校向けクイズサービスの開発を行う。2016年10月に伊沢拓司とクイズを使った知的メディア「QuizKnock」の運営を開始。「遊ぶように学ぶ世界」の実現に向けて学びを良くするサービスの開発に取り組む。

株式会社baton 前田徹哉

大学卒業後、西武百貨店(現そごう・西武)入社。その後PwCコンサルタント(現日本IBM)を経て、スクウェア・エニックスに入社、オンライン事業部長としてECやコミュニティを統括。2011年10月にタワーレコード入社、オンライン事業本部長としてECの統括の任に従事。2019年4月にビービット入社。SaaSセールスのシニアマネジャーを経て、2021年1月より「QuizKnock」を運営する株式会社batonに参画、マーケティング部部長。中小企業診断士。著書に 「売り上げを倍増させる“顧客勘定"マーケティング “赤字顧客"を黒字に変える実践手法」がある

株式会社ビービット 藤井 保文
執行役員CCO 兼 東アジア営業責任者
一般社団法人UXインテリジェンス協会 事務局長

1984年生まれ。東京大学大学院修了。
上海・台北・東京を拠点に活動。国内外のUX思想を探究すると同時に、実践者として企業の経営者や政府へのアドバイザリーに取り組む。
政府の有識者会議、FIN/SUM、G1経営者会議など「アフターデジタル」に関する講演多数。
アドバイザリーでは小売、金融、メーカー、インフラ等の様々な企業において、UX/DXから経営やビジネスモデル、顧客価値を抜本変革する取り組みに関わる。AI(人工知能)やスマートシティ、メディアや文化の専門家とも意見を交わし、新しい人と社会の在り方を模索し続けている。
『アフターデジタル』シリーズ(日経BP)の続編であり、実践的な方法論を記した『UXグロースモデル』と、オンラインフェス「L&UX2021」における世界のトップリーダーの議論をまとめた『アフターデジタルセッションズ』を、2021年9月に2冊同時出版。

「QuizKnockに学ぶ、データ活用とファンづくりとは?」ウェビナーアジェンダ

  • トピックA:QuizKnockが取り組むファンづくり
    株式会社QuizKnock CEO 伊沢拓司 氏
  • トピックB:データ活用とファンづくり(1)〜YouTubeで始めるファン理解〜
    株式会社baton 代表 衣川洋佑 氏
  • トピックC:データ活用とファンづくり(2)〜オウンドメディアで始めるファン理解〜←今回はココ
    株式会社baton マーケティング部部長 前田徹哉 氏
  • ディスカッション←今回はココ
    (インタビュワー)株式会社ビービット 執行役員CCO兼東アジア営業責任者 藤井保文

トピックC:データ活用とファンづくり(2)〜オウンドメディアで始めるファン理解〜

Webメディア「QuizKnock」における顧客理解

前田徹哉氏(以下「前田」):
ここからは、Webメディア「QuizKnock」の顧客理解について、前田からご説明してまいります。

Webメディア「QuizKnock」とは
QuizKnockが 掲げる「楽しいから始まる学び」を実際に「クイズ」というツールを通して読者に体感してもらう場所がWebメディア・QuizKnockです。私たちは「知る」ということに対して受け身になりがちですが、クイズを解くことによって「解けた!」「なるほど!」といった楽しさを享受することができます。その楽しさを「知」への入り口として読者の皆様に「もっと知りたい!」と思っていただけるような情報を発信していくことが、Webメディア・QuizKnockの使命です。

前田:
簡単に表現すると、Webメディア「QuizKnock」を見て、翌日誰かに話したくなるようなことや、「飲み会でちょっと話してみよう」と思えるような、知的な面白さを追求しているメディアです。

実はWebメディア「QuizKnock」は、ビービット社のサービス「ユーザグラム」を使って読者の行動分析をしています。そのプロセスがこのようになっています。Webメディアの大型リニューアルに向けて、「ユーザグラム」を使って観察し、データを蓄積させているところです。

「ユーザグラム」を使ったWebメディア「QuizKnock」の分析プロセス

「ユーザグラム」を入れる前は、WebサイトのPV数はわかるが、どんな読者に、どんな順番で、どのくらいの時間読まれているか、はよくわかっていませんでした。
そこで「ユーザグラム」を使って、どんな読者が、どんなタイミングで、どのように記事を読んでいるのか仮説を立て、読者を観察し、仮説との差異があった場合にはその差異がなぜ生じたのかを推察して読者の悩みやチャンスを探り、それに基づいた施策立案を実施することでUXの改善を図っています。

ここからは、三つの観察事例をもとに、具体的な行動分析結果についてお話ししていきます。

観察テーマ1. 「朝Knock」を毎日解いて、2ページ目まで見てくれる人の動きとは?

クイズを解くと、クイズに関する詳細が2ページ目に表示される仕組みになっている 

一つ目が、平日の毎朝掲載しているクイズ「朝Knock」です。毎朝解いてもらい、QuizKnockを習慣化してもらう狙いがあります。毎朝「朝Knock」を解いてくれる「ロイヤルユーザ」の動きを見て、ペインポイントやチャンスポイントを知るために分析を実施しました。

観察開始の時点では、9時台にお知らせすると読者の反応が良いことがわかっていました。
また、分析を始める前の想定としては、想定の時刻に、想定の所要時間で朝Knockを読んでくれているか、読むのは朝Knockだけですぐに離脱していないか、などを挙げていました。

これらを踏まえた上で行動観察をした結果、代表的な読者としてこのような人がいました。

Aさん:デイリーで来訪。クイズ完了まで5分と、ほぼ理想的な行動をとっている。Twitterからおすすめされたページも見ている。来訪の時間帯にばらつきはあるが、ほぼ毎日来訪。奇抜で難易度の高いクイズは完了していない。

ヘビーユーザではありますが、初学者のようです。
そこで、ヘビーユーザが解けるクイズと解けないクイズはちゃんと分けていきましょう、という施策につながっていきました。
基本的には我々が理想とする動きをしてくれているのだけど、結構難易度の高いクイズだとつまづいている様子が見えたので、そこをユーザフレンドリーにしていったほうがいいんじゃないか、みたいな話が出てきました。

観察テーマ2. 動画連動企画「アタック25」の流入(Twitter含む)からの行動観察。クイズ好きに広く受け入れられる企画であったか?

クイズ番組「アタック25」にちなんだコンテンツで新規ユーザ獲得を狙った

二つ目の観察テーマは、有名なクイズ番組「アタック25」が放送終了となる際、敬意を表してYouTube動画と連動して公開した記事です。「アタック25」にちなんだコンテンツを出すことによって新規ユーザの獲得を狙っていました。
そこで、この記事が本当にその狙い通りになっているかを行動観察の目的として設定し、分析を始めました。

分析を始める前は、記事「アタック25」を見た後の読者の行動は、関連記事や新着記事を読んだり、新規の来訪者はアトランダムに記事をクリックしたりしているのではと想定していましたが、行動観察してみたところ、このような読者がいることがわかりました。

Bさん:関連記事を見ている。絵画、文学などの芸術系のクイズを解いている。レコメンドされたと思われるページをひたすらクリックしている。

事前の想定通り、関連記事を読んでくれています。クイズを解きたいと思っているようですが、特定のカテゴリを探しているようです。
そこで施策案としては、いろいろと見てみたいと思ってくれている読者が迷わないように、タグやハンバーガーメニューなどを入れて見やすくする。それから、記事やクイズの種別、難易度をタイトルに入れる、といった案が出ました。

観察テーマ3. 「今日の一問」を解いたユーザはそれをきっかけにサイト内を回遊しているか?

2021年9月から始めた「今日の一問」。サイト内の回遊を狙っている。

最後は、「今日の一問」を観察します。昼に1問だけ出題し、物足りなさを感じた人にサイト内を回遊してもらうことを狙いとしています。狙い通りにユーザが動いてくれているかを探ります。

観察時点では、Googleアナリティクスで見ると回遊率は30%ほどでしたので、分析前の想定としては、我々の狙い通り「今日の一問」をトリガーに、他のページを訪れていると考えていました。

しかし、数人を行動観察したところ、結果としては「『今日の一問』は来訪目的になっているようには見えない」ことがわかりました。たまたま「今日の一問」に辿り着いたのちに、同一ジャンルのクイズを探してハマっていく行動がみられました。しかも、訪問時間は夜中や早朝などバラバラで、どうも「今日の一問」は回遊のトリガーにはなっていないようでした。

この事実からどういう施策案を出したかというと、やはり施策の目的が叶っていないので、「今日の一問」を毎日ちゃんと解きに行きたくなるような仕掛けを考えることにしました。例えば、SNSで行う予告。「音楽に関する一問ありますよ!」のようにテーマを設定するとか、解いたクイズ記事に近しいコンテンツが提案できる仕組みを作るとか、「今日の一問」のまとめページを用意するとか。より目的性を高め、きちんとここから流入してサイト内を回遊していただくページにしていこうとしています。

(再掲)「ユーザグラム」を使ったWebメディア「QuizKnock」の分析プロセス

このように、「ユーザグラム」を使いながら、想定と事実のギャップを見て、ギャップが発生した要因を探り、目的を持って施策を実行し、評価していく形をとっています。
いいギャップであればどんどんそれに寄せるし、悪いギャップであれば解消していく。
以上がWebメディア「QuizKnock」での「ユーザグラム」を活用したユーザ分析のお話でした。

ディスカッション

QuizKnockイズムでファンを“染めていく”意識

ビービット藤井保文(以下「藤井」):
とても面白かったです。ありがとうございます。面白いと思ったのは、まず全員が全員「仮説」の話をしていたこと。そういう企業文化であることを強く感じました。
さて、まず伊沢さんに質問です。分析の結果、「こういう方向でやろう」という制限の中でコンテンツを作るのは二つの意味で難しいと思っています。
一つは、自らが決めた制約の中でコンテンツを作る難しさ、もう一つが、コンテンツの品質を考えたときに、先ほど伊沢さんがおっしゃっていたようにユーザさんにおもねるわけにもいかないでしょうし、かといってPVや再生数といった数字を追いかけるとコンテンツの品質が落ちてしまう、みたいなこともあるのかなと思っています。その点で何か気をつけていることはありますか。

伊沢:
一番はやっぱり「自分たちの中でやりたくないことはやらない」というのは、すごく大事にしています。知的メディアですから、ともすると非常にアコギなことになってしまう。知的に間違ったことを、さも正しいかのように表明して、それで皆を扇動してしまう可能性はあるわけですよね。
ですから「これはダメ、あれはダメ」というのはみんなで示し合わせていますし、チェック体制にはすごくパワーを割いています。校正校閲のチームが動いていることで品質を保っている部分は大きいです。

あとは、コンテンツづくりの制約条件でいえば、ファンと呼ばれる人たちを逆に「変えていく」という意識は初期からありました。
「ファン」とは、自分の意思で見たいものを選んでクリエイターにいろいろと指示する存在ではなくて、動画を見ているうちに価値観が変わっていく存在なんだ、と。

必ずしも過激なものだけを楽しむのがエンタメではなく、QuizKnockを見ていると「あ、こういうプロセスが楽しいんだ」とか、「クイズを作るって、そんなに大変なんだ」とか、そういうふうに変わっていく。

過激なYouTuberさんと数字や時間の取り合いをしたときに不利になる面はあるのですが、一方で我々のファンを、我々のイズムで、言い方は悪いですが“教育”していくことによって、コミットメントを高めてもらい、価値観を共有していく。その中でいいコンテンツづくりができるのだと思うので、意外と窮屈には感じていないのが現状ですね。

藤井:
いいですね。倫理とポリシーとコンテンツ品質を最優先事項として置いていて、その上で分析結果を反映させていますよね。

コンテンツづくりにおけるメンバー間の「共有」の多さが高品質の秘訣

藤井:
もう一つ伊沢さんに質問です。コンテンツづくりで品質を保つのもすごく大変な中で、伊沢さんはどういう「時間の割き方」をしているのだろうと気になっています。後継者づくりみたいなところに割くのか、自分で制作するのに時間に使うのか、方法論化する方向に割くのかとか。ご自分でどういう時間の割き方をしていると思いますか。

伊沢:
そうですね、僕の場合、「共有」になるんですかね。
1個1個の動画やWebの作品に関しては、各チームでやってくれる人がいます。QuizKnockの中ですごくトライアンドエラーを繰り返して、何回も会議をして作品の良し悪しを議論して作っているんですよね。YouTubeの出演者も月1で会議があって、過去の動画見ながら「これが良かった」「これは言っちゃダメだね」と振り返ったり、編集チームから「ここがカットになったので、今度気をつけてくださいね」とフィードバックが返ってきたりするので、そういう「共有」の場が多いのが我々の強みかなと思います。

個々のコンテンツに関しては事例をたくさん蓄積して、その都度その都度共有することによって、ガイドラインを明確にしていくやり方をとっているので、僕のパワーはそんなにかかってないですね。

藤井:
なるほど、とても勉強になります。コンテンツをみんなで作るという体制をとっていて、コンテンツを見返す中で意見を共有したり、考え方がシェアされたりしていく。すると、自然と品質が高いコンテンツを作る過程で、みんながそれをある意味「学んでいく」、そんな現場になっているんですね。

仮説の検証精度を上げるパラメーターの扱い方

藤井:
衣川さんは先ほど、コンテンツの質も変わることもあれば、曜日や季節などといった変数も数々あるとおっしゃっていました。
変数が多い中で、常日頃仮説の検証を行うのはすごく大変だと思うのですが、コンテンツの質やテーマや長さ、タイトル、他にも曜日や季節といった様々な変数の中で、優先的に扱ったり、重視している変数はありますか。

衣川:
細かい分析は動画制作チームのみんなが率先してやってくれているので、それ以外の、特に自分の観点で見ている点でお話ししますと、企業様とのタイアップ動画の再生回数は非常に注目するようにしています。
いわゆるタイアップ動画は一般的な視聴者からすると、見たくない動画に分類される可能性があります。それに対して、我々がどういう企画をもって、あるいはどういう演出をもって、タイアップ先の企業様と我々とのwin-winと、視聴者の感じる「面白い部分」とをつなげるか。そこが非常に難易度の高い部分ですし、いろんな工夫のしがいがある部分だと思っています。

うまくいくと企画力の証明にもなりますし、視聴者の満足にもつながるし、「これからの学校教育とは」みたいな少しレベルの高い議論にもつなげられることもあるので、企業様とのタイアップ動画の再生回数は特にチェックすべき要素だと思っています。

藤井:
なるほど。面白さがブレてしまったりする可能性がある分、より一層その時に行った演出やデータから得られた知見の活用がちゃんと成果に繋がっているか、見るようにしているということですね。その結果がさらに知見に繋がり、高い成果を出すことができていらっしゃるのだと感じました。

ファンを定義するのではなく、ファンの「ジャーニー」を定義する

藤井:
ファンの定義や段階みたいなものってありますか?
コンテンツの力が強い場合、ファンの定義をする必要がないことって結構あると思います。普通にコンテンツを出せば、一定のビューが取れたりする。QuizKnockにはそういう強さがある一方で、動画やWebメディアとしてのQuizKnockもあれば、スマホゲームアプリもあるといったように、様々なコンテンツの種類やファンとの接点がありますよね。そうすると、やはりファンの段階のようなものがそれぞれあるのかなと思っているのですが、いかがですか。

前田:
はい。予想ですが、2:8の法則(パレートの法則。顧客全体の上位2割が売上の8割を構成する法則)は働いているのではないかなと思っています。
ですので今後、それを確かめるためにも、そして上位2割の人が離れないようにしていくためにも、CRM(Customer Relationship Management。顧客関係管理)をやっていくべきかと構想しているところです。

ただその一方で、嗜好性の高いメディアになると、一口にファンと言っても、教育に対すること、QuizKnockメンバーに期待することなど、人によって異なってくると思っています。例えば、QuizKnockのイベント来場者は女性が圧倒的に多いが、動画を視聴しているのは男性の方が多い。多分、QuizKnockという場・メディアに求めているものに階層が存在していると思っています。
ファンマーケティングを進める際に、どの層を中心に考えるのか、どの層に「QuizKnockっていいよね」と思われたいのかを考えてアクションをしていくイメージが必要だと感じています。これはブランディングとして大事な部分だと思っているので、戦略的に考えている最中です。
ですので、一概に上位2割にウケるコンテンツを作っていくわけではなく、若干違う軸も用意する必要があると思っています。

藤井:
面白いですね。ビービットが出した書籍『UXグロースモデル』の中で書いた「ダブルループモデル」と似ていると感じました。そこでは、無料・廉価版の顧客ジャーニーと、有料版のジャーニーを示しています。ユーザのゴール状態や理想的なファン設定をする際に、特定の種類だけを設定してしまうケースが結構あると思うのですが、有料版のジャーニーは別に1本である必要はなく、複数あっていいという考え方です。例えば、ゲーム「ポケモンGO」であれば、ポケモンを集めたいジャーニーもあれば、コスチュームで自分のアバターを飾りたいジャーニーもある。その設定がしっかりされているのはとても重要なんですよね。
ですので、前田さんのお話を伺って、ファンの段階というよりはむしろファンの種類というか、ロイヤルユーザのジャーニーを複数考えて作っていくというお話は、とても必要な考え方だと改めて思いました。
伊沢さん、ファンの定義に関して、いかがですか。

伊沢:
ファンの定義で難しいと思うのは、QuizKnockの場合、コンテンツのことが好きでも嫌いでも、来訪したらカウントされ、収益につながるモデルであることでしょうか。
ビービット社の「ユーザグラム」はコンバージョンしたところからデータ分析すると思いますが、動画の場合、気に入らなかったとしても広告は見てしまっているので、QuizKnockにお金が入ってきます。ですので、ファンの定義も分析も難しい。特にYouTube上だとデータを取りづらいので、非常に苦戦しているところではあります。
ですが、今言ったような「ジャーニーを定義する」という意味では、我々も本当にいろいろなジャーニーを設定して、仮説を立てながら動画を1個1個作っていますので、ファンの定義を一義的に決めているというよりは、仮説ごとにちょっとずつ変わっているのかなと思います。

藤井:
なるほど。QuizKnockの一つのコーナーを見てみると、ユーザからは一つのコーナーとしか見えていなくても、QuizKnockのメンバーの皆さんからはコーナーの中でもクイズ1問1問を企画上カテゴリ分けしているから、少し違った見方をしているわけですよね。そうすると、複数カテゴリを楽しんでいる人の行動パターンを見つけたり、新たなファンの定義を発見できたりすることがあるのだと思います。このケースは私の実体験でもよくあるので、ファン定義の議論はここに行き着くのかもしれませんね。

コンテンツづくり、ファンづくりに終わりはありませんし、まだまだ道半ばでこれからもいろんな企画を行っていきたいとのことですので、これからも新しいアプローチ、楽しみにしています! では、本日はここまでです。ありがとうございました!

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