2021.11.11 Thu.
ペインポイントを見つけるには?ユーザ視点で不自由や貧しさを解消する方法
2021.11.11 Thu.
目次
- ペインポイントとは?その言葉の意味と定義
- カスタマージャーニーマップとペインポイント
- ビービットが考えるペインポイントとは?
- 事例で分かるペインポイントの見つけ方
- ペインポイント解消への取り組みがUX向上につながる
ペインポイントとは?その言葉の意味と定義
ペインポイントとは、ユーザ・顧客が商品・サービスを購入・利用しているときに生じる課題や悩み、不幸せな状況を指します。
ペインポイントについて考える際、単にユーザの課題や困っていることを解消するだけでなく、不幸せな状況を構造的に理解するように努めましょう。
根源的に何がペインになっているのかを発見し、どうしたら幸せな状況(ゲインポイント)に結びつくのかを考えていくことが重要です。
カスタマージャーニーマップとペインポイント
ペインポイントを探す際、一般的にはカスタマージャーニーに沿って考える方法が一般的です。
カスタマージャーニーとは、顧客が商品やサービスを購入・利用する際に、その企業との各タッチポイント(接触点)で発生するやりとりや、顧客の期待・感情・行動を「旅(ジャーニー)」になぞらえたもの。その一連のプロセスを地図のように視覚化したものを、カスタマージャーニーマップと言います。
顧客の置かれている状況を俯瞰的にとらえることで、顧客が何に困っているか、解決するべき問題が何かを把握できます。注意点としては、「マップ」を書くことが前提になってしまわないことです。
ジャーニーに沿ってユーザ・顧客の状況を想像する
ペインポイントを洗い出す基本的なフローは、以下のようになります。
1.特定の行動フローを定める(家を探すなど)
2.そのときの理想的な行動を想定する
3.理想行動とのギャップを把握する
4.ペインのメカニズム(どのような要因がそのペインを生み出しているか)を理解する
たとえば「引っ越しをする部屋を探す」ユーザを想定して、ジャーニーを考えてみます。物件の探し方は、一般的に考えると以下のような流れになります。
1.新しい部屋で実現したいライフスタイルをイメージする
2.イメージを「駅徒歩15分以内」「バス・トイレ別」といった「こだわり条件」に落とし込んでいく
3.家賃の予算内で「どのこだわりを優先し、どのこだわりを捨てるか」を決める
4.候補物件の中から気になる物件をピックアップし、比較検討する
5.内見で部屋の内外の様子をチェックする
6.賃貸契約を結ぶ
この流れに沿ってユーザが困りそうなことを考えると「実現したいライフスタイルのイメージがわかない」「どの条件を優先するべきか判断できない」「条件に合う物件が見つからない」など、いくつかのペインポイントが浮かび上がってきます。
ここで大事なのは、ペインポイントを点で捉えないことです。何らかの困っている状況は、点ではなく「仕組み」だと捉えてみると、根本的な解決策とユーザをさらに自由かつ豊かな状態にもっていく方策のヒントが見えてきます。
企業視点ではなく、顧客・生活者視点でペインポイントを発見する
大事なことは、企業視点や自社起点ではなくあくまで顧客視点でペインポイントを見つけることです。
上記のようなペインポイントについて、物件情報を紹介している側が解決しようとすると「もっと細かい条件を設定できるようにしよう」や「もっと掲載物件数を多くしよう」といった案を出しがちです。
確かに、引っ越し慣れしたユーザであればそういった解決策も有効かもしれません。しかし、初めて引っ越しをするユーザが、物件情報の良し悪しをどう判断していいのかさえわからず、お部屋探しそのものに大きなハードルを感じていたとしたらどうでしょうか?
これでは、細かな条件設定を可能にしたり掲載数を増やしたりしたところで、余計に顧客を混乱させることになります。せっかくペインポイントを見つけても、ユーザ目線で価値のある解決策を講じなければ、よりよい体験を作るUX向上にはつながりません。
ビービットが考えるペインポイントとは?
ペインポイントを見つけて解消していくのは、「顧客のロイヤルティ向上のため」とされることがしばしばあります。確かに個別サービスによってペインを解消することで顧客ロイヤルティが向上することもありますが、それを目的としてしまうのは誤りです。では、ペインポイントを見つける本当の目的とは何でしょうか。
ペインポイントは何のために必要なのか?
企業やサービスのコンセプトを決めるときにも、サービスのコア体験を作るときにも、ウェブサイトの問題点を改善するときにも、ペインポイントを想定することで顧客の状況にマッチした体験・ソリューションを作れます。
逆にペインポイントに向き合わずに、自分たちが作りたいものだけを作ってしまうと、顧客視点のないひとりよがりなものになってしまいます。
ペインポイントを洗い出すことで、企業として実現したかったことは何なのか、社会にあるどのようなペインを解決したいのか、根幹となる部分をはっきりと定義付けすることが大事なのです。
事例で分かるペインポイントの見つけ方
これまでペインポイントについてなぜ必要なのか、どう見つけるのかを書いてきました。ここでは2つの事例をもとにペインポイントのより具体的な見つけ方を紹介します。
歯磨きを嫌がる子どもに苦労するお母さんに寄り添ったアプリ
長年、親子の歯みがきにまつわる問題に寄り添い、「歯みがきの習慣化」に向き合っていたライオン様。次の一手として、アプリと連動するIoTデジタルデバイスの開発をイメージしていたそうです。ただ、「IoT歯ブラシをつくろう」という切り口だと市場が限定されそうだったので、ビービットからは「お母さんの“ペイン”をなくそう」という切り口で進めることをライオン様にご提案しました。
実際に親子の歯磨きの様子を調査してみると、まさに戦場のような状態。「歯磨きを嫌がる子供と歯磨きをさせたいお母さん」という対立構造ができあがってしまっていました。さらに、お母さんの一部は「ちゃんと磨かなければ」と強いプレッシャーを感じ、それが子どもへの強制的な態度に現れていることもありました。そこで、このプロジェクトは、「子供に歯磨きをさせたいのに、してくれない」というお母さんの不安や苛立ちを、アプリとIoTデバイスによって解消していくことを目的に設定しました。
さまざまな切り口で熟考した末にできたのは、犬の「ペスくん」というキャラクターを一緒に洗ってきれいにしてあげよう、というストーリーでした。キャラクターを親と子のあいだに入れたことで、親子の協力関係が築けるようになったのです。また、「とっても上手!」などとキャラクターから話しかけられることで、子供が主体的に歯磨きをするようになり、歯磨きを通して親子のコミュニケーションも円滑になりました。
お客様の「無理なく健康に」のために全社DXを目指す
“トクホ飲料”の市場をけん引してきた花王様の「ヘルシア」。こちらの製品に絡んで、現在、LINEアプリで内臓脂肪を記録できるサービス「モニタリングヘルス」を提供中です。アプリの継続率向上のため、さらなるサービスリリースの方針策定とUX設計をビービットがご支援しました。
プロジェクトの発端当初は、内臓脂肪の減少効果を実感してもらうため、週に4本以上の飲用習慣を形成することが狙いだったそうです。当時、ヘルシアのユーザの飲用習慣を調べたところ、大半の方は週2本程度。そこで、少なくとも週の半分以上は飲んでもらい、「内臓脂肪が減少してユーザの健康が得られる」ことを成功地点として設定していました。
しかし、いくら内臓脂肪を減らすことが健康につながると訴求しても、新しい習慣を作ることはなかなか難しいものです。チーム内で検討を重ねた結果、方針を当初から変更して「無理なく健康に」となりました。ユーザ目線に立ったときに、健康になるためとはいえ必要以上に歩いたり、カロリーを制限したりするのは、まちがいなくペインポイントとなります。それを取り除こうと考えられたのです。
オフラインにオンラインが付属すると考えられていたビフォアデジタルの時代では、プロダクトはおいしさや機能性など、それ単体の価値を提供してきました。しかし、オフラインをオンラインが包括したアフターデジタルの世界では、デジタルとデータをよりユーザの状況に適した状態で活用できます。それにより、商品を購入して終わりではなく、その後のプロダクト体験もとらえて、価値のあるUXを提供できるのです。
【参照記事】
【前編】無理なく健康になれる仕組みとは? 花王ヘルシア事業のUX型デジタルトランスフォーメーションへの挑戦
【後編】無理なく健康になれる仕組みとは? 花王ヘルシア事業のUX型デジタルトランスフォーメーションへの挑戦
ペインポイント解消への取り組みがUX向上につながる
ペインポイントは、個々の問題を解決するためだけでなく、企業やサービスの根幹的な部分を決定するためにも、非常に重要なものです。
ユーザ・顧客の置かれた状況に潜むペインポイントを抽出し、取り除くことはUXの向上にもつながります。ペインポイントが深ければ深いほど、解決して高い価値提供が出来た時、ユーザは「このサービスをもっと使いたい」と思うようになります。
UX改善のためにも、ペインポイントの理解を深めましょう。
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