2021.11.04 Thu.
カスタマージャーニー、アフターデジタル時代で変わる設計思想
2021.11.04 Thu.
目次
- カスタマージャーニーとは? 言葉の意味と作り方のコツ
- 3つに分けられる、カスタマージャーニーの設計思想と作成目的
- 体験提供型ビジネスモデル「バリュージャーニー」とは
- ジャーニーマップ設計支援による成功事例
- 過去開催されたカスタマージャーニーに関するセミナー・ワークショップ
カスタマージャーニーとは? 言葉の意味と作り方のコツ
「カスタマージャーニー」とは、顧客が商品やサービスを購入・利用したときに、その企業とのタッチポイント(顧客接点)で発生するやりとりや、顧客の期待・感情・行動を「旅(ジャーニー)」になぞらえたもの。
そして、その一連のプロセスを地図のように視覚化したものが、「カスタマージャーニーマップ」です。
しかし、カスタマージャーニーマップを作る意味を正しく理解せずに描こうとすると、すべてを網羅しようとして収集がつかなくなったり、つい自分たちに都合のいい顧客像を作ってしまったりしがちです。それでは、実際の顧客の行動からかけ離れてしまいます。
カスタマージャーニーマップ作成の意義
顧客の行動を想像しながらカスタマージャーニーマップを仕上げることで、そのサービスを受けるうえで顧客が抱くペインポイント(課題や悩み、お困りごと)が浮かび上がってきます。このペインポイントを解決することで、高い顧客ロイヤルティの獲得とUX(ユーザエクスペリエンス、ユーザ体験)向上に繋がっていきます。
あるケーブルテレビの企業では、ウェブサイトや工事申し込み・コールセンターなど、それぞれのタッチポイントでは顧客への最適な対応がなされ、顧客満足度も高く得られていました。しかし、タッチポイント間で情報の共有が十分に行われておらず、契約を進めると顧客は同じ話を何度も説明するハメになり、大きなストレスを感じていました。
このように、顧客がサービスを利用するとき、自分がやりたいことに余計な手間がかかっているポイント(フリクション)があります。せっかくの利用体験を大きく阻害しているフリクションを見つけて改善することが、サービスをより良くしUXを向上させるための有効な視点になります。
カスタマージャーニーマップは、このフリクションを見つけるのにも役立ちます。前述した例のように、個々の接点だけを見て問題がなさそうに見える場合でも、「全体を通した体験を作る」という視点を持つことで、いままで気づかなかったフリクションが見えやすくなるのです。
ジャーニーマップ作成にペルソナは必要か?
ジャーニーマップの作成方法について何度か調べたことのある方は、「カスタマージャーニーマップの作成では、まずペルソナを明確にしよう」と書かれた記事をよく見かけたかと思います。
確かにサービスを利用するユーザを設定する必要はありますが、実はジャーニーマップ作成においてペルソナ設定は必ずしも重要な要素ではないのです。
というのも、ペルソナを細かく設定すればするほど、対象が狭くなってしまうからです。実際に一人のユーザをリサーチし、その人の現状行動を示すならそのやり方でもよいですが、多くの場合、ペルソナレベルまで細かくする必要はありません。
3つに分けられる、カスタマージャーニーの設計思想と作成目的
1.現状ジャーニー
内容:特定のサービスを利用するうえでの現在の行動
目的:課題や伸びしろを発見するために作られる
2.理想ジャーニー
内容:特定のサービスを利用する上での理想的な行動
目的:サービスを作る段階で、理想形をイメージするために作られる
既存のサービスに対して、現状のサービスとの差分を見るために作られることもある
3.日常行動のジャーニー
内容:特定のサービスを前提としない、現在の情報収集行動などを理解するためのジャーニー
目的:サービスの種を見つけたり、マーケティングにおいてそのタイミングで接触するべきかを検討したりするために作られる
ひとえにカスタマージャーニーと言っても、集客・サービス改善・新規事業のためなど、目的によって細かく分けることができるのです。
事実をもとに設計し、目的を明確にする
カスタマージャーニーマップは、「顧客の現在の行動を理解しよう」という号令で作られることが多いですが、利用目的が不明瞭だったり、作っただけで顧客を理解した気になり、活用されないケースも散見されます。
また、事業の発展を目的とせずに、ワークショップ形式でカスタマージャーニーマップを作る場合もあります。その場合、以下のようなこと目的としています。
・さまざまなステークホルダー(利害関係者)の知見を集約するため
・全員が関わったという意識を作り、チーミングを行うため
・全員が合意をしたという言質を取り、社内に意見を通しやすくするため
いずれのケースにせよ、ユーザにしっかりとしたリサーチを行ない、「実際に顧客がどのように行動しているのか」という事実をベースにしない限りは、意味のあるものになりません(例外としてサービス開始前の理想ジャーニーを除く)。
体験提供型ビジネスモデル「バリュージャーニー」とは
ビービットが提唱する「バリュージャーニー」は、先ほどの考え方をビジネスモデルに昇華したものです。ここまで解説したカスタマージャーニーを必要に応じて作ることもありますが、それがマストではありません。
アフターデジタルが到来すると、オフラインがなくなり、リアルとデジタルの境目が曖昧になります。そうなると、大量の行動データを得たり、これまで以上に人々の行動を強力にサポートできるようになったりします。
こうした新たな価値の提供や顧客の理解ができるようになった社会では、「製品販売型」のビジネスモデルは競争力を失います。勝ち残るには、例えばCD販売からSpotifyやApple Musicのような「体験提供型」のビジネスモデルに変化させる必要があるのです。
そして、この体験提供型のビジネスモデルそのものが、「バリュージャーニー」です。
新規でサービスを作るときは、理想ジャーニーの中でバリュージャーニーを考えます。そして、ユーザテストを行ったり、市場に出したりする中で、現状ジャーニーを踏まえて再び理想ジャーニーを考えるという形で練り上げ続けるものがバリュージャーニーなのです。
バリュージャーニーとカスタマージャーニーはどこが違う?
バリュージャーニーはバリューチェーンとの対比で使われる言葉です。バリューチェーンは、製品を製造してから販売するまでの「サプライチェーン」において、どこを戦略的に強化するか、どこを工夫するかを考えるもので、あくまで製品販売型のモデルです。
これに対してバリュージャーニーは、カスタマージャーニーにおいてどこでオンボードし、どこで価値の提供を手厚くし、どこにキャッシュポイント(顧客から対価を得る機会)を置くかを戦略として考えるかという違いがあります。
簡単にまとめると、これまでに解説してきたカスタマージャーニーと、バリュージャーニーが違う点は以下になります。
1.人々のどの「状況」をターゲットドメインとするかが規定されている。
2.ビジネス側のプロセスもあわせて検討され、そのうえでどこをキャッシュポイントとするかが計画されている。
バリュージャーニーについて、より詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
【参照記事】アフターデジタル型事業作り ~UX型DXの推進現場から
ジャーニーマップ設計支援による成功事例
ここからは、実際にビービットがたずさわった、ジャーニーマップ設計支援の事例をご紹介します。
【mediba】長い時間軸で体験をデザインし、ファンを生み出す
「auスマートパス・auスマートパスプレミアム」は、1,500万人もの登録ユーザーを抱える株式会社mediba様の月額制会員特典サービスです。会員に向けて、さまざまなクーポンや特典の配信、アプリの紹介などをしています。この春からサービスの段階的なアップデートを行い、ビービットはその方針策定プロセスをご支援していました。
プロジェクトはまずNPS®(ネットプロモータースコア)の推奨度別に、ユーザーの行動観察調査をするところから始め、調査の結果から導き出した仮説をプロトタイプに落とし込み、実際に使ってもらって検証を繰り返す「高速プロトタイピング」を実施しました。
【ディー・エヌ・エー】ヘビーユーザへの深掘りからコアなUXに高める
株式会社ディー・エヌ・エー様が運営する「マンガボックス」は、いま大人気のマンガアプリの中でもパイオニア的な存在です。競合アプリも増えて伸び悩みを感じるなか、立て直しを図ろうとしていたタイミングで、ビービットが今後の指針となるユーザー調査やカスタマージャーニー作成の支援をしました。
第三者としてユーザ調査を行い、アプリの使い分けやマンガの嗜好といった多くの変数の中から、サービスに関係するシーンにまで絞り、体験全体の流れと行動のきっかけを洗い出していきました。そして、「マンガ」という商材の特殊性に沿ってUXを高める方法を模索していきました。
過去開催されたカスタマージャーニーに関するセミナー・ワークショップ
ビービットでは定期的にUXやジャーニーマップ作成に関するセミナー・ワークショップなどを開催しております。中でも月に1回、開催しているオンラインセミナーでは、『アフターデジタル』著者・藤井に直接、質問ができます。
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