2021.07.29 Thu.

新刊『UXグロースモデル アフターデジタルを生き抜く実践方法論』を先行紹介!

2021.07.29 Thu.

書籍『アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る』、『アフターデジタル2 UXと自由』に続き、この秋に第三弾となる書籍『UXグロースモデル アフターデジタルを生き抜く実践方法論』が発売になります。企画意図と読みどころを、藤井保文が紹介します。

アフターデジタルを「実装する」1冊

――この秋に、『アフターデジタル』シリーズ第三弾となる新刊が発行されるそうですね。

藤井:はい。前著2冊は、その時点で起きている現象の解説に重きを置いてきましたが、今回はサブタイトルに“アフターデジタルを生き抜く実践方法論”とうたっている通り、大半を実践的な組織づくりと方法に割いています。また、今回はビービットの複数メンバーとの共著となっています。ある意味、ビービットが実践している内容をふんだんに盛り込んだ本ともいえます。

――本書を企画した、背景を教えてください。

藤井:ありがたいことに『アフターデジタル』1と2を通して、UXの重要性を感じてくださる方々が増えたという手応えがあります。直接的に、またSNSの反応などからそうした声を聴き、UXという概念はこれから企業が生き抜くために必要であるし、個人としてキャリアを積む上でも理解すべきだと考えられていることを感じていました。

ただ、その感触を起点に一歩踏み込んで、いざ「もう少し学ぼう」と思っても、適した参考材料が実はあまりないんです。「UX」がWebやアプリのUI/UX、UIデザインやユーザビリティの話として追求されてきた経緯があるので、デザインの実用書が出てくることが多いんですね。

私自身ももともとはWebのユーザビリティ構築や改善から経験を積んできましたし、ビービット自体もそこから事業領域を広げてきたので、UI/UXの考え方や実践方法を否定するつもりは一切ありません。むしろ、学習すべき重要な登竜門と思っています。とはいえ、アフターデジタル時代に必要な「ユーザ体験」、デジタルがリアルを内包した体験設計の企画や実践方法を学びたいという人に、インターフェースの話が必ずしもマッチしているわけではありません。

そこで、広くユーザ体験の設計をしていく上で、組織づくりと方法を学べる書として企画したのが、今回の新刊でした。分量も前著の倍以上になる予定で、教科書的に使っていただけるものとして位置づけています。

個々の人間の内面ではなく「状況」を捉える

――では、新刊の内容について教えてください。

藤井:DXの大きな潮流を踏まえて、どのような活動をすべきか、それはどうしたら実現できるのかを提案しています。タイトルで掲げた「UXグロースモデル」は、このモデルをつくることをDX実践の根幹と位置づけているものです。なので本書では、UXグロースモデルの構築のプロセスがわかるように、順を追って章を組み立てています。

――具体的には?

藤井:これまでの経緯や時代の流れの章、あるべきユーザ理解の章、そしてそのユーザ理解の思想をベースにした方法論を大きく4つ解説しています。

例を挙げると、アフターデジタル時代にはビジネスを「バリューチェーン型」ではなく「バリュージャーニー型」に変える必要がある……と前著シリーズやこのサイトでも強調していますが、これは既存の組織のままで簡単に実現できることではありません。価値観も変えないといけませんが、組織体制や評価軸も変えないといけない。たとえば、そうした体制づくりとそれぞれのあるべき業務を解説しています。

あるいは、よく「潜在ニーズを捉える」といった言葉が使われると思います。ただ、よく考えてみると、iPhoneだって目の前に差し出されたら「こういうものが欲しかった」と思っても、何もない状態で潜在的にユーザのなかにニーズがあるわけではないですよね。となると、実際に“ある”前提で潜在ニーズを探ろうとするのは、かなり難しい話です。

それよりも、人の状況を理解するほうが、実はやりやすかったりする。個々人の内面に入っていくより、「ビジネスパーソンだが仕事中ではなく、ジムで汗を流しているとき」といった状況を捉えて適したアプローチをするほうが、より多くの人に価値を届けられることもあります。同じ状況に置かれ、同じ刺激を受けると、人は似たような感情を抱いたり似たような行動をとったりするからです。こうした内容をまとめたのが、ユーザ理解の章です。

「UXグロースモデル」の4つの形

――では、4つの方法論とは?

藤井:UXグロースモデルは、大きく「トップダウン型」と「ボトムアップ型」に分けられます。ボトムアップ型には、さらに日常業務のなかから細かくユーザーの状況を理解して改善していく方法と、特定のサービス全体に対して市場環境やサービス全体の課題から抜本的に改善していく方法があります。前者を、日々細かく速くPDCAサイクルを回していくことから「高速改善」、後者の俯瞰して取り組むやり方を「抜本改善」と呼んでいます。

つまり、
①ボトムアップ型の高速改善
②ボトムアップ型の抜本改善
③トップダウン型の事業変革
④トップダウン型の全社変革
の、4種類に分類しています。

書籍の中では書いていませんが、データドリブンに改善を行っていく方法も存在するため、それを加えてこのような図式にしています。

藤井:少し触れると、①がいちばんハードルが低く、大きく組織を変革しなくてもユーザにつぶさに向き合っていれば実践可能なモデルです。現状をベースに、現場レベルからどこにユーザのペインがあるかを探し、解決していく方法です。これは、わざわざ「UX改善」と意識せずとも行われていることだと思います。

ただ、これだと進捗が細かく、対処法に留まるとも言えます。そこで②の、ボトムアップながらもう少し俯瞰してサービス全体として市場環境を見定め、よりインパクトの大きい改善ポイントを見つけて着手する方法が有効になってきます。ただ、この方法の課題は、現実問題としてそうした俯瞰的な視点を持つ人があまりいないことです。

プロダクトやアプリの場合はプロダクトマネージャーやアプリの責任者になるかと思います。Webメディアや雑誌なら、編集長ですね。現場の方が日々の業務をこなしながら着手するのは、少々難易度が高いような改善の実行を目指します。

一方、③と④は事業部レベル~経営レベルでの方法論です。これらはトップの理解とコミットメントが前提になるので、執行できる人が限られますが、実現できた際のインパクトは大きくなります。

――比重としては、ボトムアップ型のほうが大きくなりますか?

藤井:その予定です。というのは、UXは今後、どのような仕事においても重要な概念になってくると考えると、なるべく多くの方が自分の業務に役立てられる本にしたいと思ったからです。常に手元に置いて、仕事に引き当てながら、考え方や具体的な方法を都度取り入れていただけたらと考えています。

――仕事の内容を問わず、自分の行動に落とし込めるヒントが得られるわけですね。

藤井:それを目指しています。細かな改善や試みはインパクトは小さくても、その積み重ねがトップに届き、全社的な活動になるケースもあります。実際、今回提唱するUXグロースモデルは、そのようなつながりのある思考方法だとも考えています。

繰り返しになりますが、ビービットもWebやLPの改善からスタートして、徐々に「顧客の状況を理解する」「それに対してソリューションを提案し体験の質を向上する」といった事業に拡大してきた経緯があるので、ボトムアップの積み重ねから開ける道筋も十分にあると実感してきました。

その意味で、かなりつまびらかに我々の方法論を明らかにした本になっています。ビービットとしては、そこまで公開することに懸念がないわけではないですが(笑)、それよりも、誤った方法論や組織づくり、体験設計が広がることの危機感のほうが大きかったのです。

本書を通して、より多くの方に「どうしたらUXの質を高められるのか」の実践的な考え方と方法を知っていただき、自分の仕事に少しでも取り入れていっていただけたらと思っています。

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