2021.08.25 Wed.

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UXやビジネス、マーケティング、カルチャーに関して、事例や方法論などアフターデジタルのさらに先をCCO藤井保文が書く、ここだけでしか読めない書き下ろしニュースレターを毎週1回お届け。
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■ 製造販売体験一体型とジャーニー使用料モデル
■ 「ユーザ理解」と「他人は理解できない」を乗り越える
■ キーワードによるフィルターバブル化
■ 「放置」という技法

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Vol1. 行動の時代 -脱・PCインターネット時代のロジック

 「デジタル」と一口に言っても、インターネットの歴史は長く、PCインターネットとモバイルインターネットでは、前提としているルールが全くことなるように思います。これをはっきり理解できているかどうかで、サービスや事業の作り方も、UXの企画の仕方も異なるため、なるべく解像度高く理解しておきたいところです。

今何より重要なルールを一言で示すと、「行動支援」という言葉になるのではないか、と考えています。

それは、ユーザに対して「彼らが望む行動を、実際に実現させてあげられる」というレベルまで行くサービスが「価値あるサービス」と認められる、ということであり、企業や個人も「何か行動に起こす」というレベルにまで達さないと信頼を勝ち得なくなっている、ということでもあります。

この「行動支援の時代になっている」という論考は、新しい書籍や理論になるほどの可能性を秘めていると思うのですが、まだ綺麗に体系立てて整理できていないため、このAFTER DIGITAL Inspirationの中でまずは思考を書き溜めていこうと思います。

・時代変化で変わる、ユーザ理解と価値提供

PCインターネットの時代、モバイルインターネット時代、デジタルリアル融合時代を3つに分けて、まずはその変化を簡単に眺めてみます。

PCインターネット時代は、「インターネットの中心がパソコンの前」という時代。インターネットに接続する時間は他の作業や生活から分断され、「今からインターネットをやるぞ!」という心持ちで開始し、一定時間利用する形式です。ビジネスの観点では、参照できる顧客の情報はそこまで多くなく、純粋なオンライン上の行動とある程度の属性情報程度しか取得できない、という時代でした。この時代のユーザ理解やUXづくりは正直かなり簡単で、文脈のパターンが非常に少なく、目的が明確で、基本的には途中で何かに邪魔されることは少なかったと言えます。

さて、モバイルが登場するといつでもどこでもインターネットに接続可能になるので、文脈が複雑化し、オンラインに接続することを常態化するようになりました。ちょっとしたスキマ時間や通知をきっかけに、すぐにインターネットに接続できます。ビジネスに活用する事を考えると、文脈のパターンが一気に増えたため、ユーザ理解の難易度も、「描いたシナリオ通りにユーザが行動してくれる」という行動デザインの難易度も、一気に高まった時代でした。

SNSの広まりとスマートフォンの浸透は不可分ですが、「発信すること」のハードルが下がったことは非常に重要になります。誰でも「有名人」になれるようになったことも、まさに「行動の実現を可能にしてくれた」ことの一つです。

モバイル時代のさらに先にあたる現在進行中の変化は、「オフラインとの融合」です。日常の買い物、飲食、移動などもインターネット空間とつながりました。特にモバイルペイメントなどとつながり、支払い・購入と連動したため、一気に「ユーザができること」のハードルが下がり、様々な行動の実現を可能にしました。さらにビジネスとしても、行動をしたデータが残り、それさえあれば「描いたシナリオ通りにユーザが行動しているか」を検証したり、ユーザ理解をするためのヒントが多く得られたりするようになったので、難易度だけでなく、企業やサービスができることの可能性も一気に広まったと言えるでしょう。

さて、「それって言われるまでもなく、別に当たり前なんじゃない?」と思われるかもしれません。しかし、「何が可能になったのか」「どのような生活様式が普通になったのか」を明確に知り、それをサービスやビジネスに反映させられているかと言われると、なかなか簡単に「分かっているし、できている」というのは難しいのではないでしょうか。

重要なポイントをまとめると、「常時接続状態」で「発信を含むインタラクション、支払い、商売まで可能に」なり、「行動を起こすハードルが著しく低下した」という点だと考えています。

・「行動の実現」が可能になると、「行動を評価」するようになる

このような時代の変化は、「情報の自由」からさらに進み、「行動の自由」を得た流れだと捉えています。

インターネットを通じて、これまで分断されていた情報が開かれ、調べたり人に聞いたりすればある程度何でも分かるようになりました。特定の権力のみが情報発信権を持っていた時代ではなくなりましたし、企業が社会やユーザに不義理なことをしてもすぐに告発されてしまうことになりました。ここではこれを「情報の自由」と言っており、一方でフェイクニュースなど、新しい問題も発生していると言えるでしょう。

しかし、これは「PC時代のインターネットロジック」ではないか、というのがここで行っている主張です。

「行動を起こすハードルが著しく低下」した現在では、「行動の自由」が得られるようになっています。結果、人々は「情報がもらえる・可視化される」といったサービスには魅力を感じず、「そのサービスがあることで、一体何が新しく実現できるようになるのか」を求めるようになっている、と言えます。

アフターデジタルシリーズで出てくる中国のタクシーアプリ DiDiは、ドライバーに「乗客に対して誠意を持って努力をすると給与にしっかり反映されて返ってくる」ということを可能にしました。アリババによる信用スコア「ジーマクレジット」は、これまで信用情報がなくお金が借りられない・融資を受けられない人たちがアリペイを使うことで、例えば滞納せずに電気代光熱費などを払う結果日常的に信用を蓄積したり、アリペイで買い物をすることで一定以上の支払い能力があると示すことができたりした結果、融資を受けられるようになりました。これらはデジタルリアル融合時代において、日常行動にまでオンラインが浸透したことで、日常的な行動をあたかもゲームの経験値のように蓄積することが可能になり、できなかった行動を実現したり、その実現のための評価を行動ベースで行なっていることが分かります。

・K-POPが世界でこんなに広まったのも「行動の実現」

BTSがアメリカのチャートで1位になったり、BLACKPINKがアメリカ最大級の音楽フェス「コーチェラ」に出演したり、日本でもNiziUが話題になったりと、世界中を席巻しているK-POP。これが「なぜこんなにも広まったのか」も、行動の実現という観点から見ることができます。音楽性やパフォーマンス、国家政策という観点を一旦置いておくとして、「ファンが実現したい行動を実現させる」という仕組みを意識的に作っていることが寄与していると考えられています。

日本では意外と知られていないことですが、K-POPの経済圏において、ファンが自ら応援するアイドル(以後「推し」)を支援する方法はたくさんあります。いくつか紹介しましょう。

【サイト公開版はここまで】